新型コロナウィルスの終息が見え始め、世界各地への渡航、交流が徐々に元の状態にもどりつつあります。
さあ、準備をはじめましょう。

ホームステイで知ったオーストラリアの水不足

エッセイ

これは、私がオーストラリアのパースで人生初めてのホームステイをした時のお話です。

私がお世話になったお宅は、おばあちゃん(70代)一人とペットの猫が一匹のお宅でした。
ホームステイしている学生は私一人という、とても人員の少ない静かなホームステイ先でした。

このオージーのおばあちゃん一人暮らしのお宅で体験したカルチャーショックをご紹介させて頂きます。

 

シャワーの時間が長すぎるですって???

 

ホームステイをしていた時季は8月です。日本は真夏、オーストラリアでは真冬にあたります。西オーストラリア州のパースは比較的温暖な土地ですが、8月は一応真冬にあたりますので夜ともなると気温も下がってきます。日本からパースに行ったばかりの私は、体が夏の気温に慣れてしまっていたので、夜になると寒いなぁ~と感じていました。

こんな寒い時は日本でしたら、夜は湯舟でゆっくり温まりたいところです。 がしかし、ここはオーストラリア。お風呂はシャワーのみです。熱めのシャワーをジャーッと勢いよく出し、体を温めつつ、洗いつつ、20分程毎日入っていました。

すると、3~4日経った時おばあちゃんに言われました。

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おばあちゃん

シャワーの時間がちょっと長いわね。
あと、シャワーの間湯をずっと出しっぱなしはダメよ。

 

シャワー20分、長いですか~?? 
お湯出しっぱなしっていやいや、体洗うときは止めてますよ~。 
そりゃ頭洗う時は、シャンプーからコンディショナー流し終わるまで出しっぱなしでしたが・・・
だって、いちいちシャワー止めると寒いんですもん。
湯舟ないから、体温まんないし・・・

いろいろ言いたい事はありましたが、人さまのお宅でホームステイさせて頂いているという事と、当時初めての海外ホームステイで英語もままならず、言いたい事の半分も言えない状態の私は・・・

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郷に入っては郷に従え・・・だな

と、自分を無理くり納得させ、その後はおばあちゃんのおっしゃる通り、頭を洗う時も、頭を濡らしてはシャワーを止め、泡を流しては止め、と寒さと戦いながらシャワーを浴びる日々となりました。
この寒さのおかげで必然的にシャワーの時間も短くなりました。(おばあちゃんの思惑通り)

 

食器の洗い方が衝撃的!!

その衝撃は初日に訪れました。

おばあちゃんが準備してくれた夕飯を美味しくいただいた後は、食器洗いのお手伝いです。
おばあちゃんと一緒に食器をシンクに運びます。

 

まずおばあちゃんは、シンクに栓をしてシンクの7割くらいのところまでお湯を溜めました。
そして、食器用洗剤を適量お湯に混ぜ、泡をたて、その中へ使用済みの食器を全てイン。
食器たちは、さながら ”泡ぶろ” に入っているような状態です。


そして、スポンジを持ってその ”シンクの泡ぶろ” の中に手を入れて、泡の中で食器の汚れを一枚一枚落としていきます。

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へぇ~、こうやって洗うのね~

この後、衝撃的な展開が待っていました!!

おばあちゃんは ”シンクの泡ぶろ” の中で一応汚れの落ちた食器たちを、そのまま引き上げ水切りかごに次々と上げていくではありませんか。

もちろん食器にはまだ泡が残っています。

私は、この先どう言う展開になるのか固唾をのんで見守りました。

おばあちゃんは、おもむろに食器拭き用のタオルを手に取り、食器を拭き始めました。

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おばあちゃん

さぁ、そこにもう一枚タオルがあるから拭いてちょうだい。

さすがに、一言口から言葉が飛び出ました。

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泡は水で流さないんですか??
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おばあちゃん

流さない流さない。
水がもったいないでしょ。
拭いてしまえば、泡は消えるから。 
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洗剤残ってない? 体に悪くない?
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おばあちゃん

この洗剤大丈夫だから。
私この歳まで健康だし。
大丈夫大丈夫!!
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(普通の洗剤に見えますけど・・・)
わっかりました・・・
(郷に入っては郷に従え・・・だな)

かくして私は1ヶ月間、この食器洗い方法で食後のお手伝いをしたのであります。

 

おばあちゃんの生活習慣から見えたオーストラリアの水不足問題

この二つのカルチャーショックからわかる事は、「水の使い方に厳しいおばあちゃん」ということです。

がしかし、同時に私は、「これはこのおばあちゃんだけのことなのだろうか・・・」という疑問を抱きました。

そこで少し調べてみました。

すると・・・わかってきました。

オーストラリアは、慢性的に水不足の問題を抱える国家だったのです。

オーストラリアには水不足のイメージはあまりありません。
私もこのことを知るまで、全くそんなイメージは持っていませんでした。

オーストラリアは国土の約20%が砂漠地帯です。人間が暮らす大陸では最も乾燥している大陸だと言われています。よって、飲料水の確保が季節・地域によって非常に困難になる事もあります。

オーストラリアには4段階の給水制限システムがあり、特に乾期シーズンは水の使用が厳しく管理されます。例えば、給水制限が「レべル2」の場合は、庭木への水やりは午前6時~8時の間のみ(オーストラリアのお宅は、どのお宅も広くて庭も広いです。ホームステイ先のおばあちゃんのお宅も広々とした芝生が建物の前方に広がっていました)など。

この国の一般常識として、シャワーは1人4分!!(20分も入ってりゃ、そりゃ注意されるわ!)洗車をするのにホースは使用禁止、庭の水やりにスプリンクラーは禁止、散水できる日も番地により曜日を制限など、水の節約は徹底しています。

観光でオーストラリアを訪れる時には、ホテルに滞在するためこういったことは感じることがありません。一般家庭にホームステイし、おばあちゃんの生活習慣に触れることで知る事の出来た事実です。

 

一方、日本はどうでしょう。
食器を洗うときはジャージャー水を流し、毎日たっぷり湯の入ったお風呂に入り、寒い時はシャワーも出しっぱなしで使います。当たり前に、日常で水をジャバジャバ使っています。

日本はなんて水が豊富な国なんでしょう。
そんな事、今まで考えたこともありませんでした。

きっと、オージーおばあちゃんの長い人生の中では、水が使えずに苦しい思いをしたことが何度もあるんだと思います。それ故にあの「水の使用に厳しい生活習慣」が身についたんだと思います。

シャワーの時間が長いと言われた時、英語が喋れないがために言い返せず言う事を聞いた形になりましたが・・・

言い返せなくてよかった~!!!

すぐ言われた通りにしといて良かった~!!!

こんな深い事情があったなんて知らんかった~!

 

ほっと胸をなでおろしたのでありました。