新型コロナウィルスの終息が見え始め、世界各地への渡航、交流が徐々に元の状態にもどりつつあります。
さあ、準備をはじめましょう。

トロントで小麦アレルギーの学生とホームステイした話

エッセイ

Woodbine Beach Boardwalk 参照元:https://www.toronto.com

これは、私がカナダのトロントで人生4度目のホームステイをしていた時のお話です。

五大湖の一つのオンタリオ湖という日本の四国とほぼ同じ面積の大きな湖がトロントにはあります。

トロント東部のオンタリオ湖沿岸は砂浜になっており、この一帯が The Beaches(ザ・ビーチーズ)と呼ばれています。

このザ・ビーチーズにあるお宅でカナダに着いて最初の2カ月間、ホームステイさせて頂きました。

家族構成は、50代のご夫婦とホームステイしている学生3~4人のにぎやかなお宅でした。

私はここで、食物アレルギーを持つ学生とホストファミリーとの板挟みにあってしまったのです・・・

 

小麦アレルギーの大変さを知る

私は幸運にも食物アレルギーは何もありません。何でも食べ、どんな料理でもたいてい美味しくいただくことができます。 そして、私の周りにも食物アレルギーを持つ人間がいなかったため、食物アレルギーを持つ方のご苦労をほとんど知らずにそれまで生きてきました。

そんな私が、トロントのホームステイで食物アレルギーを持つ方のご苦労の一端を知ることになったのです。

こちらのお宅でお世話になり始めて2週間が過ぎた頃、ブラジルから新しい学生がホームステイにやって来ました。名前は Will (ウィル)君です。

彼と私は語学学校が同じだったため、最初の1週間はほぼ一緒に行動することになりました。

事は早々に起こりました。

ウィルかやってきて2日目の朝、ホストファーザーに呼び止められました。

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Hostfather

Yoshi、今日学校帰りにウィルをグルテンフリーのショップに連れて行ってやってくれ。
場所はウィルが地図持ってるからから。
(そんな事何も聞いてないよ・・・ブツブツ)
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はい・・・
(グルテンフリー???)

振り返るとウィルが後ろにいて、よろしくといった感じでニッコリ笑っています。

学校へ通う途中いろいろと聞きだしました。

すると、こういう事です。

ウィルは小麦アレルギーで、小麦は全く口に出来ないという事。しかし、カナダの食事は欧米系なので、主食はパン・パスタなどです。ほぼ小麦からできています。よって、グルテン(小麦)フリー(不使用)の加工食品(米粉などが主に使用されています)を購入する必要が直ちにあるというわけです。

 

これは大変です。初日は、ホストマザーも家にかろうじてあった米でなんとか食事を作ってくれていましたが(だから前日は、主食がライスだったのね)、今日の夕食は絶対にグルテンフリー食品をゲットしなければ、ウィルが喰いっぱぐれてしまいます。朝ホストファーザーもブツブツ言ってましたが、どうやら学校とホストファミリーとの間に連絡の行き違いがあり、ウィルが小麦アレルギーという事が伝わってなかったようなのです。

授業が終わって、ウィルの持っていた地図(ブラジルからグルテンフリーショップの情報はしっかり持ってきていた)を見ながらダウンタウンをウロウロしていたら見つかりました。

そこは、グルテンフリーの加工食品の専門店でした。

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へぇ~、こういうお店があるのね~。
初めて見たし、入ったわ~。

店内は、ウッディーかつシンプル。こざっぱりしたとてもいい感じのお店。

様々な加工食品が展示販売されています。

バゲットをはじめとした様々なパン、フェトチーネ・ラビオリ・ラザニア等々パスタの種類も豊富です。その他には調味料やスナック、様々なスウィーツなどなど、小さな店舗ですが所狭しとグルテンフリーの食品が置かれています。

これ全部グルテンフリー?!と、私が関心して店内を眺めている間に、ウィルは買い物を済ませていました。1週間分くらいのパンとパスタを購入していました。

ウィルはブラジルでも普段こういったショップでグルテンフリーの食品を購入しているそうです。

 

ホストファミリーとウィルの間で板挟み

その日の夕食で、ウィルは購入したグルテンフリーのパンとマザーの作ってくれたおかず(おかずは小麦が入っていなければ普通に食べられる)を美味しそうに、安心した表情(気のせいかそう見えた)で食べていました。

翌日ウィルと学校へ行くバスに乗っていると、こんな事を言い出しました。

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昨日ファザーに昨日買った食品の代金を請求したんだ。
そしたら、「君からは、通常のホームステイ代しかもらってないからその食品代を払うことはできない」って言われた。僕は、ちゃんと学校には伝えたのに・・・

後に、ホストファーザーからはこんな話を聞きました。

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Hostfather

学校から何も聞いてない。ウィルからは君たちと同じ金額しか受け取ってないから、やっぱり特別な食費は出せないな・・・

グルテンフリー食品は、普通の食品よりも割高です。

どちらの言い分もわかります・・・

ウィルに、学校のホームステイ担当者にこの件を話してみたらと言いました。

すると、ホームステイ担当者と話をしたウィル(彼は英語もままならないのに、行動力がすごいのです)が教えてくれました。

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「小麦アレルギー対応の食事を作ろうとすると費用と手間がかかる。君は通常のホームステイ代しか支払っていないので、ホストファミリーがグルテンフリー食品の代金を支払わないのは当然です。今のようにグルテンフリー食品は自分で購入するという方法がベターじゃない?」だってさ。

 

ウィルが通常のホームステイ代しか支払ってないのは事実の様なので、結果グルテンフリー食品はウィルが自分で購入するという形で落ち着きました。

 

この件を通して感じた事

日本にいる時は、小麦アレルギーの人に出会ったことがなく、グルテンフリー食品専門店なるものも見かけたこともありませんでした。

考えてみれば日本は主食がお米ですので、たとえ小麦アレルギーの人であっても、通常の食事から小麦を除くことは、欧米のパンやパスタが主食の国よりは簡単なのかもしれません。
スウィーツも和菓子なら小麦の使われていないものも沢山あります。

小麦アレルギーよりもむしろ蕎麦アレルギーの方が身近に感じ、大変なアレルギーだなと感じていました。

しかし、欧米で小麦アレルギーとなると日本の蕎麦アレルギーよりももっと大変です。なんせ毎日の食事に大量に小麦は使われているのですから。グルテンフリー食品専門店というものも、パンやパスタを主食とする国々では、日本よりももっと身近なものなのかもしれません。

ウィルが、グルテンフリーのラザニアを振舞ってくれたことがあります。

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ラザニアをゆで、トマトソースとハムで上手にミートソースを作り、ホワイトソースを重ねて、何層もラザニア・ミートソース・ホワイトソースの層を作り、最後にチーズをたっぷり乗せてオーブンで焼きます。

こんな若い(19歳)ブラジリアンにお手製のラザニアを作ってもらうことに、至福の喜びを感じつつ、割高なグルテンフリー食品をアレルギーもない私が食べてしまう事に一抹の罪悪感を感じつつ、一口・・・

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おいしい~!!!
ウィル~!!!

ウィルは料理が好きだと言っていました。手の込んだ料理ではありませんでしたが(ご馳走になっといて・・・)、とても美味しかったです。

ウィルはブラジル人、ラテン系です。その後は、何事もなかったかのようにホストファミリーと日々の生活を満喫していました。

 

そして、この件を通して感じた事がもう一つあります。

ホームステイをする際は、こちらの条件はしっかりと伝えるという事!!

特に、アレルギーなどの生活、ひいては命に関わる(人それぞれではありますが、アレルギー反応の仕方によっては)ような事は、ホームステイを依頼したエージェントだけではなく、手配した学校にも事前の確認をする必要があるでしょう。

何か起こってからでは、遅すぎます。

念には念を! です。

何事も確認が重要ですね。